2017年のクイーンズクライマックス・シリーズ戦で優勝し、さらに2018年前期にはA1初昇級。
好調の波に乗っている廣中智紗衣選手に近況やデビュー時代からの思い出、そして今後について伺います!
- レースを振り返ってみていかがでしたか?
- 前月に一般戦で大村を走っていて、その時になんとなくプロペラ調整の方向性が分かっていたので乗りやすさ重視で調整しました。
前検日ではバランスが良くないモーターでしたね。
前回の選手が伸び足重視に仕上げていたみたいなんですが、実際はそうでもなかった。でもレース足は良かったですし、プロペラを叩き変えたら回り足も良くなって全体的に乗りやすい形に仕上がったので、安心してレースに挑めました。
- 優勝戦は3コースからのまくりで勝利しました。
- 3コース進入のカド受けで難しいところでしたが、内2艇がスタートで遅れたので私に有利な展開になりましたね。
この日は横風で風向きも変わりやすくて読みづらい風でした。
またコースを主張する進入はいつものレーススタイルと異なる部分なので、その影響で進入が深くなるかなと思っていたらそうでもなかったです。
元々握るつもりではいましたが、4号艇の鈴木(成美)選手が見えていたことが後押しとなって1マークは握っていくことを決めました。
後続艇からのプレッシャーは距離が離れていることがわかったのであまり感じなかったです。
あとはターンマークだけを見てきっちり回ることに集中しました。
内2艇がスタートでへこんだ展開になり、外側の艇に呑まれないように旋回できたことが今回優勝できた要因だと思います。
- 優勝だと確信した瞬間はいつですか?
- 優勝だと感じたのは3周2マークを回ったときですね。
あまり緊張もなく気負いせずに走れました。
- レーサーになったきっかけは?
- 高校生のときに父が運転するバイクの後ろに良く乗せてもらっていたので、高校生で原付免許を取ってバイクを運転したかったんですが、母に止められたんですよ。
また、高校時代は水泳部に所属していたので水にちなんだ仕事がしたいと思っていました。
この2つの要素がある仕事がないかと調べたら、ボートレースにたどり着きボートレーサーを目指すようになりました。
私は蒲郡出身で、ボートレーサー募集のCMも普段からよく流れていましたしね。
試験は視力が足りなくて落ちたのを省く(笑)と2回目で合格しました。
- 訓練は厳しかったと聞きますが?
- 厳しかったですね。
私たち88期と89期は訓練中に本栖研修所からやまと競艇学校(現:ボートレーサー養成所)へ移転した世代で、両方で訓練をしました。
本栖研修所にはボートの揚降装置がなく、訓練生らが整備場から道路を挟んだ河川敷まで運んで水面に下ろしていました。
さらに時計台の設置や燃料など課業するための準備を時間までに終わらせないといけない。
時計台は重いし、冬場は地面が凍っていて滑るし、やまとの恵まれた環境とは違い、とにかく過酷な環境でした。
本栖研修所は精神的に鍛えられた場所でしたね。
- これまでの選手生活で一番印象深いことは?
- 初1着を取った時ですね。後輩も入ってきたのになかなか勝てなくて…。
デビューしてから1年経った頃でした。
6号艇で5コース進入からまくり差しでトップに立ったんですが、後続艇からプレッシャーをかけられながら必死に乗り切った1着でした。
今でもよく覚えていますよ、初優勝した時よりも印象深いです。
同じ日程の別の場では同期(吉永則雄選手)が初優勝していて、その差には笑っちゃいましたけどね(笑)。
- ジンクスなどありますか?
- 決まりごとを増やすと使命感に縛られてしまうのであまり意識しませんが、レース本番時は右足からボートに乗っていると思います。
練習や展示のときは気にしていないですが、本番のときは右足から乗って、ボートやモーターに声をかけていますね。
モノにも心があると思っているので話しかけています。
いつも言うことを聞いてくれる良い子ではないですね(笑)。
- 2018年前期は初A1級となりましたが、その要因は?
- いろんな人に言われるんですけど、何も変えていなくて。
意識したのはどうすればスタートを早く切れるかということです。
メンタルトレーナーの方と話して「もっと具体的なスタートを切るイメージを手前からするといいよ」とアドバイスをいただきました。
そこから自分の中でイメージトレーニングをしていたら、徐々にスタートが早く切れるようになってきました。
これが良い結果につながったんだと思います。
- 結婚して東京へ移籍してから何年経ちますか?
- 12年ほどになります。
デビュー時は愛知支部でしたが選手生活の半分以上は東京支部ですね。
今は2人の子供がいて10歳と3歳の女の子です。
- 出産後の仕事復帰で不安なことはありましたか?
- 1人目は若いときだったんですが、ボートに乗った後はひどい筋肉痛になりましたね。またその頃はプロペラ調整が未熟だったこともあり手探り状態で復帰しました。
2人目の時の方が復帰は楽でした。復帰初戦は握ることが怖くて、思ったように握れなかったですが、レースを重ねていくとその抵抗感はなくなりましたね。
- 出産後半年ぐらいで復帰される方が多いですね。
- 出産後の復帰時期は自由なのですが、半年が多いですね。
私も1人目は半年、2人目は8カ月ぐらいで復帰しました。
1歳まで休んでいる人は少ないですね。
休む期間が長いとレース勘が鈍ってくるので、どの選手も産んでからはすぐに復帰することを考えて生活していると思います。
選手生活を続けるにはあまり長く休まない方が良いとは思います。
- ご夫婦でレーサー(夫・深水慎一郎選手)をしていますが、良い点と悪い点はありますか?
- 良い点は同じ職業なので情報交換がしやすいこと。
プロペラの形やモーターパワーの出し方について共有することができます。
また平日に休みを取れるので家族と出かけることができます。
その一方ではお互いのレースが入れ違いになるとほぼ会わないので、一般の家庭よりかは顔合わせする回数が少ないです。
- A1級になって今年の目標は?
- 無事故完走で!
身体が第一ですからね(笑)。やはり年齢を重ねていくと疲れやすくなったり疲労が蓄積しやすくなったり…。
本当に身体が元気じゃないとこの仕事は続けられないです。
健康第一!
- 今年の年末は平和島でPG1クイーンズクライマックスがありますね?
- クイーンズクライマックス・シリーズ出場を目標とします(笑)。
クイーンズクライマックスの方に出場できたら幸せですが、現状は厳しいですね。
- 今後の課題はありますか?
- スタートですね。早いに越したことはないし、自分からレースの展開が作りやすくなるのでね。
集中していけるようには心がけていますが、まだ慣れていません。
コンスタントに早いスタートを切れるようにしたいですね。
あとはプロペラ調整を早い段階でベストな状態にできるようにしたいと思っています。